歯科医院では様々な汚れが発生しますが、その中で材料によるものの比率は高いですね。
特にレジンや接着剤、充填剤の汚れは様々な個所で除去できずに〝取れない汚れ〟となってしまっている状況をよくお見かけします。
成分が樹脂やガラス系ですので石膏のように水や有機酸(クエン酸など)では軟化も除去もできません。
ではどうするか。
こんな汚れが残っていませんか?
汚れが何なのか、特性を知る。
「このキャビネットの引き出しに、主についている物はなんですか?」
とスタッフさんにお聞きすると、
「そうですね~、ほとんどこれだと思います。」
と引き出しを開けて見せて下さったのは、
コチラの製品を調べてみると
【主成分】 粉末 (100g 中) パラホルムアルデヒド 5g 酸化亜鉛 65.4g その他
という事です。
酸化亜鉛は抗菌作用を期待しての成分のようです。
とすると敵は、形を作るための成分であるパラホルムアルデヒド、ですね。
これはどういうものか・・・。
三菱ガス化学のパラホルムアルデヒド製品情報ページ
https://www.mgc.co.jp/products/nc/paraformaldehyde.html
主な用途は、塗料、接着剤、繊維加工樹脂、フェノール樹脂。
フェノール樹脂???
フェノール樹脂って何?(明和化成株式会社 製品情報ページ)
https://www.meiwakasei.co.jp/phenol.html
ここまでわかった特徴や用途から考えると、この、「フリージノールテンポラリーパック」は除去対象の種類としては、シンプルに樹脂と考えて対処、!です!
樹脂という事は、洗剤ではムリ、水でもムリ、酸も反応しない、ですね。
敵に応じた作戦で対抗する。
さて、洗剤、水、酸で落とせないとすると、
残る手はアレしかありません。
そう、削るです。
何を隠そう、ワタクシ、洗浄剤で分解するより、溶剤などで溶解除去するより何より
削るのが好き(笑)
一言で削ると言っても方法は一つではなく、
1、サンドペーパーや研磨シートで削る。
2,コンパウンド(研磨剤)で削る。
このどちらか、もしくは複合ワザで歯科医院の汚れにはほぼ完勝できます。
今回、使ったのは2種類の研磨剤です。
左は、クルマのワックスのメーカーとのイメージが強い「SOFT99」の、コンパウンドトライアルセット、の細目→中細→極細3種類中の〝細目〟です。
「細目」は最も荒い物です
これで今回のキャビネット表面に付いた樹脂類はキレイになくなるハズ。
「フリージノールテンポラリーパック」はかなり柔らかい部類の仮着材だそうですので細目1本勝負です。
こんな風にクロスにコンパウンドをつけて直線的にこすって行きます。
コンパウンドなどで研磨する際、素材まで削ってしまいあとで困ったことにならないため、私がやっている確認方法は、
目で見て削れ具合を確かめるのではなく、指先で触って終わりを決める。
という事。
この場合は、表面を指先で触って凹凸がなくなればキャビネット表面に何もついていないという事ですのでその状態になったら研磨終了です。
目で見ての確認ですとわかりにくく、削り過ぎてしまう事もありますので終わりは慎重にしなければいけません。
写真を撮っていないのですが、表面についているものはキレイに除去できました。
汚れがないだけではなく、見た目の清潔感を!(仕上げ)
コンパウンドで汚れが完全に落とせました。
しかし、このキャビネットの表面は塗装ですので、研磨によって目に見えない程度の傷が入り、そのため他の箇所と比べてツヤが少なめになりました。
クレンリネスの要点として、
汚れていないだけではなく、もともとツヤのある物はツヤツヤにする。
という大切な事があります。
ツヤツヤ、ピカピカであることで清潔感が出ます。
ドライ・シャイン・オーダリー!ですね。
ツヤツヤピカピカ仕上げと言えばコレ!
昭和の名品、ピカール!!
コチラをマイクロファイバークロスに付けてひたすら磨く。
そして仕上がりはこの通り
ビフォー&アフターを見てみますと
キャビネット以外にも、樹脂系などの研磨が必要な汚れが院内各所にあると思います。
あきらめずに着実に対処して行って欲しいと思います。
ただ、研磨はやり過ぎると取り返しのつかない事になる可能性もあります。
対象面が塗装の場合、塗装が研磨されてしまい周囲と全く違う色になる。
またユニットの樹脂パーツの場合、削り過ぎてへこんだ部分ができてしまう。
他にも削り過ぎの失敗は数々あります。
慎重に、時々指先で触り、近くでみたり離れてみたりして、見た目も確認しながらフラットな状態に持って行って下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は研磨で除去するタイプの汚れ(付着物)の除去方法を説明しました。
汚れにはタイプがあり、それに合ったアプローチがあります。
・アルカリ性の汚れ(主に水による汚れ)
→酸性タイプの物質・洗浄剤(クエン酸・弱酸性洗浄剤)で。
・酸性タイプの汚れ(一般環境の粉塵・皮脂など)
→アルカリタイプの物質・洗浄剤で。
・固着タイプの汚れ(テープ跡・レジンなどの樹脂 他)
→溶解・研磨。
他にもありますが、大きなものはこのようなところです。
歯科材料による汚れの場合、先生やスタッフの皆さんは、普段使われている材料の性質をご存じですので、まずは汚れのタイプを判断されると、どのアプローチを試すかが判断できますね。
今回の例では完全に固着タイプの汚れです。
しかし、ビフォー写真のような状態でも清掃をされようとしていなかったのはなぜか。
なぜできないかの理由
・その物質が何かはわかっているが、どう落とせばいいのかわからない。
・その汚れが何かわからない。
・そもそも汚れている事が目につかなくなっている。
・長年そのままの状態だからこの医院ではそれでいいのだとみんなが思っている。
このようになると、きれいにしよう、落とそうとする考えが薄くなり、日々の清掃、そして大掃除の項目からもはずれて行きます。
そして風景になる(T_T)(T_T)(T_T)
よくある失敗
落とす方法がわからない時よくあるのが、
それでだめだったら〝落ちない汚れ認定〟
まずはこんな考え方から変えて行きたいですね。
医院の清潔感を維持するため、汚れのタイプとタイプ別のアプローチをマスターして下さいね。
樹脂系には研磨のアプローチを考える!
以上!デンタルクレンリネスプロジェクトからのオススメでした!!