クレンリネスが進まない部分は強化作戦で!歯科技工室のクレンリネス

技工室のクレンリネスクレンリネス運営

医院全体のクレンリネスを進め、いい感じになってきたけど、ある部分だけがなかなか進まない。

そんな時、どうしますか?

 

待合い室、ユニット、シンク。
これらは患者さんに感じてもらえたり、感染対策との関連もあり、きれいになるとうれしい部分であったりと、皆さんがやりがいがあり、〝清掃〟が進む箇所です。

その反面、多くの歯科医院でなかなかクレンリネスが進まない箇所があります。

 

資材庫、更衣室、スタッフルームや通路などのいわゆるバックヤード。
そして、技工室。

 

これらの場所のクレンリネスが進まない理由はそれぞれかと思いますが、実績上、クレンリネスが進まない場所リスト上位5カ所です。

今回はそんな部分のクレンリネスを進めるにはどうすればいいかを考えてみます。

 

クレンリネスは部分ではなく空間で見る。

 

これが基本中の基本。
そして皆さんの医院が本当にキレイな場所になるために最も大切な事のひとつです。

 

やりがいのある場所だけ進めるやり方では、院内全体の印象はクレンリネス開始以前と変わりない状態になります。

医院全体がきれいで、深呼吸したくなるような空気感があってはじめて皆さんの理想とする環境なのではないかと思います。

 

医院全体を整えるため、バックヤードなど、なかなか進まない場所のクレンリネスを進めるにはどうすればいいのでしょうか。

 

これまでにDCPよりご提案し実行して頂き実績のある進め方の例を説明したいと思います。

単刀直入にストレートに行きますね。

 

強化作戦でクレンリネスにするという方法

 

これまでにDCPと医院の皆さんとの協力で行ってきた方法の中で一番効果的なものが強化作戦/集中作戦です。

 

クレンリネスを進める雰囲気づくりは様々な方法がありますね。
それは医院ごとの雰囲気に合わせたものにするのが最も効果があります。

 

DCPとしては、できれば皆さんが楽しく感じながら進めて頂きたいと言う思いがあり、ひとつのアプローチとして、ゲーム性を持たせて行う事をおススメする事があります。

 

チーム対抗戦やアウトプット期限を決めて行う方法、表彰を前提とした方法もあります。

 

そんななか、特定箇所を徹底的に進めたい場合には強化作戦を特にオススメしています。

技工室のクレンリネス強化作戦

 

「強化作戦」って?

 

「強化作戦」とは、ある一定カ所をターゲットにして、全員が一定期間、決められたタスクをルールにして行う、と言うものです。

 

これは食品製造業界の衛生管理の手法であるHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point=危害分析重要管理点)でも実践された例がある方法です。

 

食品工場のラインの流れの中でのハザード(危険性)注)を特定したら、その危険性をなくす作業方法を集中項目にして、一定期間徹底的に行い、習慣化する、と言うやり方です。

 

他の事はひとまずこれまで通り進めるとして、集中項目に対して徹底的に管理して厳しくタスクを行っていきます。

 

すると、タスク実行期間が終わっても、その習慣がしっかりと残り、仕組み化しやすくなる、と言うものです。
特に作業者の意識を作り上げる時に役立つ方法です。

注)食品工場でのHazard(ハザード=危険の要因)は、食中毒の原因となる細菌と異物混入の原因となるモノ。

 

 

クレンリネスチームワーク

 

 

強化作戦の進め方

 

今回は歯科医院で強化作戦を進める方法を提案します。
この記事では、技工室を例に挙げてみたいと思います。

こんな医院を想定して書いてみます。

1,スタッフさんの人数は20名程度。
2,技工士さんはいません。
3,Dr.は院長先生他3名。
4,受け付け4名と衛生士さん、助手さん。
5,全員で一斉にクレンリネスを行う時間が取れない、取りづらい。

 

目的と目標を決める

 

クレンリネス自体もそうですが、

何のためにやるのか、どんな状態にするのかを具体的に決めて、そして皆さんに伝えて下さい。

また、視覚的なイメージでも目標があった方がよいと考えられた場合、目標となるようなきれいな技工室の写真を掲示するのもモチベーションが上がる方法です。

 

期間を決める

 

出口の見えない取り組みはしんどい物です。

必ず何月何日までと期限を決めて実施して下さいね。

 

作戦名を決める

 

まずは強化作戦の名前を決めましょう。
最初からゲームの雰囲気アリアリですね(笑)
このことで、スタッフの皆さんんの強化作戦へのイメージがカタイ物になる事をなくしておきます。

ですので名称も気分が上がるようなものがいいですね。

・技工室ピッカピカ大作戦・・・大変ありきたりでスミマセン(^^;)
・技工室ショールーム化計画・・・ちょっと違うかもですね(T_T)/~~~
・技工室スーパークレンリネス作戦・・・・・・(^^;)

小林にネーミングセンスがない事を披露するだけですのでここまでにしますが・・・。

これはクレンリネスリーダーさんの中で、あるいはスタッフさん全員でブレストして頂ければいい名前ができるでしょう。

 

方法を提示する

 

次に皆さんに行って頂く事をしっかりと伝えます。

1,いつのタイミングで

2,どの程度の時間で

3,何を使って

4,どのような作業を

 

この4つは絶対です。

これは何かを行う時に最も大切な事です。

 

具体的に決めて具体的に伝える

 

これがないと人は動きません、動けません。

 

クレンリネスという取り組み自体がそうですが、
やる気はあっても具体的に何をすればいいのかがわからないと人は動けないのです。

逆に、方法が本当に具体的であればモチベーションに頼らず、決められたとおりにすればいい、と言う事も言えます。

また、選択肢があったり、やることが多すぎる場合も人は動けないのです。

 

具体的に、一つに絞って、徹底的に行う事が成功の最も大切な事と考えてください。

 

行動科学では、「必ずしも気持ちを同じにする必要はない。行動が同じであればいい。」と言われる事があります。

もちろん皆さんのモチベーションが高い事がベストなのに間違いはありませんが、そうもいかない時にそこで悩むのなら行動科学の考え方に切り替える事も有効です。

 

技工室ピカピカ大作戦実行例

 

ここから、強化作戦の内容例を書いて行きます。
以下のようなことがあれば流れはできると思います。

 

可能であれば、「目的・目標・期間・担当者」と「方法」をそれぞれ1枚で、表や図など視覚的にわかるものを作って掲示されると見てもらえやすく、わかりやすい形になります。

 

文章が並んでいると見る気がしませんよね。
特にクレンリネスのような〝本来業務ではない事〟の書類はできるだけ明るい雰囲気を作るようにしましょう。

 

〝かわいくなければクレンリネスの書類じゃない!〟的な(笑)

 

ここはクレンリネスリーダーの皆さんのウデの見せどころですね。

 

【目的】

院内全体をキレイで気持ちの良い場所にし、クオリティーの高い診療を行うため、歯科医院の心臓部分である技工室を徹底的にキレイ化する。


目標】

・すべての箇所に1,石膏汚れ2,水汚れがない。
・トリマーのシンクまわりにはそこに必要な物以外はない状態にする。
・毎日の診療後には上記状態にリセットできる、という、しくみと行動習慣をつくる。


【期間】

第1段階 7月1日~7月15日(1週間)
第2段階 7月16日~7月23日(1週間)
第3段階 7月24日~8月7日(2週間)


【担当者】

受け付けスタッフ以外のすべての従事者(院長先生も含まれます)


【方法】

第1段階
診療中、技工室を使った後に石膏や水垢が付いている部分を3Mスポンジ研磨剤(ウルトラファイン#800~#1000)を水で濡らし15秒間こする。(これまでの事例で15秒は診療中に可能であるとの実績があります)
各自、技工室を使った後に必ず行う事が強化期間中のルールです。

第2段階
石膏と水垢がなくなったら第2段階に入ります。技工室を使ったら必ずシンク内を水で濡らしたスポンジで洗い、流す。トリマー下部分に飛び散った石膏と水をマイクロファイバークロス(白)で拭き上げる。

第3段階
朝・診療中・夜に行う事を分け、通常クレンリネスとして定着する。

(朝)技工室内整理整頓1分間・・・担当者は当初2週間はクレンリネスリーダーが行います。その後は担当表に従って進めます。
(診療中)第2段階で行った事を確実に繰り返す。
(夜)1,床の掃除機がけと拭き上げ5分間・・・拭き上げはマイクロファイバーモップに水をスプレーし、隅までこすり拭きをする。2,シンクのピカール研磨1分間・・・マイクロファイバークロスにピカールをつけ(シンク内に垂らして7cm程度に広がる量)、シンク全体をこすり上げる。その後きれいなマイクロファイバークロスでピカールをふき取る(スポンジと水で流してもよい)

 

【検証・報告】

期間中、クレンリネスリーダーは毎日、状態と状況を確認する。
状態とは対象箇所のきれいになった度合い(進捗度)。
状況とは、ルールが徹底されているかどうか。

また、段階ごとに、次の段階に入れる状態化を確認し、必要であれば段階の延長を行う。

現在の状態の報告はスタッフ全員へ必ず行って下さい。
取り組んでいる事に対しては成果が見えないと必ずモチベーションが下がります。

どんな時でもどんな事でも、取り組んで頂いている事の結果や成果は必ず皆さんに知らせて下さい。

 

 

開始前に必ず実演で伝える

 

方法については、口頭で伝えただけでは皆さんが行動できません。

必ずクレンリネスリーダーが実際の作業をしているところを皆さんに見てもらって下さい。
※『院内クレンリネス講座』後の医院様は実演の組み立てを小林に相談が可能です、ご遠慮なく^^。

 

タイミングや時間の問題で全員の前で実演を行う事が難しい場合は、動画を撮ってみてもらうようにしましょう。

これも、見たという確認のサインや連絡があれば安心です。

 

 

 

重要

院長先生からの取り組み宣言は必要です

 

歯科医院のスタッフはみな忙しく、余分な時間などない。
それを前提に考えると、必ずこの場をきれいにすると言う強い方針がないとできません。

 

「この医院をキレイで清潔な場にする」という、医院の方針である、という事が伝わる必要があります。

 

それは院長先生が全員に対してそれをお話しされる事が前提となります。

 

〝医院の方針としてこの作戦を実行する〟と院長先生が話され、
クレンリネスリーダーが具体的な方法を説明する。
この流れは医院の皆さん全員が一致して行うために最も大切な事です。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

医院を皆さんが気持ちの良い状態にする、自慢できる状態、安心安全をカタチにする、これは歯科で働く人たちの望まれる事であると思います。

 

たかが掃除、たかが汚れ落とし。
ではありますが、業務が忙しく、汚れの原因になるものが非常に多い歯科の環境では、一人一人の良心にまかせた形ではなかなか事は進まないですね。

 

気持ちはあっても簡単ではないという事は皆さんがよくご存じですよね。

 

大変な事ではあると思いますが、一つ一つをていねいに実行して行ってみて下さい!

 

 

クレンリネスが定着した時に

 

「うちの医院きれいでしょう? いえ、特に大変な事はやっていませんよニヤリ。

 

と言う状況を目指して取り組んでみて下さい!!!

 

 

技工室クレンリネス強化作戦の進めかた(DCP提案)

1,目的と目標を決める
2,期間を決める
3,作戦名を決める
4,院長先生の宣言
5,方法を提示する
6,実演で伝える
7,検証と報告を行う

 

 

【技工士さんに聞いてみた】

このテーマを考えている時、現場の技工士さんはどうされているのかを聞いてみました。
ご参考になれば幸いです^^。

「クレンリネスを始めてから特に技工室でも水回りはきれいに維持するようになりました。石膏が固まりやすい部分はたわしで洗ったり拭いたりするようにしています。シンクは毎日洗う事が基本ですが、それに加えてピカールで磨く事はしています。研磨して表面がツルツルになったのは触るとわかりますし、それをする事で石膏を含んだ水がシンクにつきにくくなりました。

トリマー
「トリマーの中は石膏汚れがたまらないように時々水を付けたたわしで洗っています。」

技工士さんに聞いてみた
「シンクは毎日、診療終了時にピカールで磨いています」そうすると石膏汚れが付きにくくなりました。

技工士さんに聞いてみたお答えくださったのは、青森県五所川原市の医療法人ウェルビーイング 津島歯科様の歯科技工士の三國さんです。ありがとうございました。